序
ワタシが最初にダム巡りを始めたのは1990年前後、今から25年以上も前のことである。まだインターネットはおろかパソコンすら一般に普及する前で、情報は紙メディアに頼るほかない時代である。
もちろん様々な趣味の雑誌は存在したが、ダムという存在はごくまれに旅行雑誌の片隅に、それもダム本体ではなくダム湖の方を主役として載っていた程度であった。なのでダムに関する情報も土木や河川の専門誌等から得る以外なく、私の書棚には今でも当時の土木学会の本がある。
なーんて書くと、いかにも知識豊富な専門家のようだが、当時から(というか今でもたいして変わらんが)ワタシの興味はダムの形式と規模くらいにしかなかったので、それに関する情報しか見ておらずぜーんぜん土木工学的、河川工学的な知識は身に付かなかった。
まあ要するに、当時はどこにどんなダムがあるかを知るだけでも簡単じゃなかったということを言いたいだけなのである。だってさ、専門書って高いんだぜ。たった厚さ5mmのうすーい本が2,300円もしたんだもの。これは今の貨幣価値に換算するとだいたい大卒初任給くらいなんだから(ちょっと誇張あり)。
それはともかく、そのころ割と田舎のそれも山に近いところに住んでいたこともあり、精力的にダムを見に行っていた。黒部、有峰、手取川、御母衣、安曇3ダム等のメジャーどころや、刀利、岩屋、下小鳥、高根第一・第二等地味目だけど実力派(意味不明)はこのころに見た。徳山ダムは絶賛建設中で、寒河江ダムはやっと本体ができたばっかで、月山ダムに至ってはまだ影も形もなかった時代だ。
だがこういう一般的とはいえない趣味に理解を得るのはとかく難しいもんで、妻をそうそう連れ回すワケにもいかなくなり、いつしかダム自体を目的とした外出はしなくなった。それでも、観光のついでに近くのダムに寄る、写真を撮る、みたいに細々とダム趣味自体は続けてきたのであった。
それが2015年3月、とある日帰り温泉に行ったときそこで配布していたダムカードを手にしたのをきっかけに、再びダムを目的とした見物の日々が始まった。
なお、ワタシが愛好しているのは、あくまでダムを『見に行く』ことである。それも『見学』ではなく『見物』。はっきり言ってワタシのダムに関する知識は形式と目的くらい、それも後者に関しては少し怪しいくらいだ。〇〇ゲートとか××ポンプ、利水だの治水だの用水だの、そういう知識は素人同然だし、この歳になってそういうことをきちんとお勉強しようという気もあまりない。なのでここに書くのは、ダムを『見た』ときのカッコいいとかデカいとか強烈とかカオスだとかの抽象的な言葉が中心のワタシの感想や、ダムへ『行く』ときの道のりや難易度(ワタシは道路マニアのケもある)等どちらかといえばどうでもいいことが中心なので、そのへんはお間違いのないように。
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